「孤独を生ききる」 瀬戸内寂聴 No.3
この章も一つ一つの言葉の重みが心にひきますね!
第四夜 マイホームの中の孤独
男と女の間に川がある
p60
...大体、恋のはじめ男女というのはピンクの眼鏡をかけた鶏どうしのような状態なのです。
ずっと以前、鶏にピンクの眼鏡をかけさせた実験をテレビで見たことがあります。
ピンクの眼鏡をかけた鶏はみんなやさしくなって、なごやかに愛しあうんです。
ところが眼鏡を外させると、とても荒々しくなってけんかばかりする。
...眼鏡をかけたまま、結婚にゴールインすると、いつの間にか度が合わなくなっていて、頭痛がしたり、胃が持たれたりしてくるのです。やっぱり、時々眼鏡の点検をして、度を直す必要があります。
...私は、男と女、夫婦の間、人間と人間の間には、川があると思っています。
その川を渡って、むりに一緒に手をつないで歩こうとしないで、両方の岸をそれぞれ、
「ああ、向こう岸にあの人はいるな」
と思って、安心して同じ方向に歩いたらいいんだと思います。川を無理して飛び越えようとするから、かえって川に落ちて溺れてしまったりする。
恋愛結婚が失敗しやすいのは、二人はひとつという結合感と酔心地をいつまでも持ち続けようとして、二人の間に川のすき間も認めまいとしているからです。
愛は人の性格をよくする
p63
...本当の愛は人を謙虚にします。こんなに愛される値打ちがあるのかしらと自分をふりかえり見つめるつつましさが生まれるものです。
...満ち足りた恋は人を謙虚にし、人にも神にも感謝の気持ちが生まれ、自分のあり余る愛で、まわりの、恋人以外の人々に対してもやさしくなるのが普通です。
本当の愛は、人を精神的にして、物質的な欲望を薄めます。
ところが今の若い人とその恋愛や結婚観は、三高とかいって、まず物質的な生活の安定を望むから、浅ましいことになるのです。
背が高くたって、知能や人格が低い男が、何の頼りになりますか。
学歴が高くったって、試験勉強ばかりして、何の興味も、本当の意味の教養もない男にどんな魅力がありますか。どんな大きな会社に入っても、現在のように、いつつぶれるかわからない社会では、学歴なんて、何の役にも立ちません。どんな社会的変動や天変地異が起きても、しっかり自分の家族を支えて養っていくという知恵と実行力がある男こそ頼りになるというものです。
高収入があったって、すべてのお金はバブルだったということを見せつけられた現代において、高収入がどんなにはかないものかわかった筈です。
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